医師の役割を果たし責任大きい助産師
妊産婦の希望を全面的にバックアップ |
■助産師とは・・・患者を診断してから治療計画を立て薬を処方
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アメリカで活躍している助産師の数は、約6200人。その活動範囲は、健康な妊産婦を対象として、妊婦検診、分娩介助、外陰部の局所麻酔、会陰切開、縫合、産婦人科検診、子宮ガン検診、乳ガン検診、性病・膣炎等の婦人科疾患の治療薬の処方、経口避妊薬の処方、IUD(子宮内避妊リング)の挿入、更年期ホルモン療法、産前教育など多岐にわたります。またハイリスク妊娠については、産婦人科医と協力して診療に当たり、帝王切開の時には、First Assistとして手術の縫合なども手伝います。
アメリカの助産師は、患者さんを診察・検査し、診断名を決定し、その治療プランを立て、薬の処方をするという、ほとんど医者と同じ役割を果たすため、全員医療過誤保険に加入し、法的にも自分の医療行為すべてに責任を負います。医療保険においても医師と助産師の区別はなく、診療行為に対して同額が保険会社から支払われます。分娩費用も同様です。
アメリカで助産師(Certificated Nurse-Midwife)として働くためには、看護師の免許を取得してから、大学院で2年間の助産師プログラムのコースを取るか、1年間の認定校のコースを取るか、あるいは、看護師の免許を持っていなければ、大学院で3年間の助産師プログラムのコースを取って、アメリカ助産師協会(ACNM: American College of Nurse-Midwives)の助産師資格試験に、合格しなければなりません。
2006年11月までに、ACNMによって認定されている学校は、大学院36校、私の場合、エール大学大学院の、2年間の助産師プログラムを修了して、看護学修士号を取得、アメリカで初めての、日本人開業助産師となりました。
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■日米のお産の違いとは・・・
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1) |
日本に比べ入院期間が短く、医療費が高いアメリカの出産 |
2) |
夫が必ず出産に立ち会うアメリカ |
3) |
自己主張するアメリカ人、医師任せが多い日本人 |
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アメリカの妊娠・出産が日本と大きく違う点としては、まず医療保険制度が挙げられます。アメリカでは正常分娩、帝王切開に関係なく、保険によって医療費が支払われるのに対し、日本の場合、正常分娩は、すべて自己負担となり、帝王切開や妊娠中毒症などの異常事態のみ、健康保険が支払われます。
アメリカでの出産費用は、自分で支払う場合、正常分娩では病院での2泊3日の入院費と分娩介助費と妊婦検診費(血液検査や超音波検査の費用は含まれない)を合わせて、約2万4000ドル、 |
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帝王切開では、4泊5日の入院費と手術費と妊婦検診費を合わせて約4万4000ドルと非常に高額となっています。日本の7日間の入院で約30~50万円の相場と比較すると、アメリカでは極端に入院期間が短く、医療費が高いといえます。
現実問題として、アメリカでは医療保険に加入する費用が大変高く、個人加入が月約400ドル、夫婦だと約600ドル、子供を含めた家族だと約900ドルです。医療保険に加入できない人たちが、全体の25%にも上り、大きな問題となっています。
次に、病院における出産では、80%以上の夫婦が、硬膜外麻酔を使った無痛分娩を希望しており、以下、自然分娩-帝王切開-吸引分娩-鉗子分娩の順になっています。妊産婦は入院すると、LDR(Labor Delivery Recovery room)と呼ばれるトイレ、シャワー、電話、TVのついた個室に入ります。そこで陣痛を頑張り、分娩をし、退院まで母児同室制で育児をするというのが、大きな病院では一般的です。
会陰切開については、アメリカではほとんどの場合、膣から肛門にかけて、真下に切る正中切開が主流で、日本のような側切開はほとんどありません。縫合糸もChromicやVicrylを使用するため、抜糸が一切なく、創部痛を訴える産婦も、側切開をする日本と比べるとはるかに少ないです。
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出産の際の立会いに関しては、アメリカの病院では、夫が必ず立ち合い、場合によっては夫が赤ちゃんの臍の緒を切ります。産婦が希望すれば、母親や上の子供たちの立ち会いも可能です。帝王切開の場合でも、夫は必ず手術室に入って妻の手を握り、一緒に出産の感動を分かち合います。日本でも夫の立ち会いが増えてきたことは、ともに生命誕生の素晴らしさを共有し、妻をいたわり、親としての自覚を持つ意味でもとても喜ばしいことです。
入院時の食事は、病院では麻酔をかける可能性が常時あるため、いくら分娩が長引いても、小さくした氷しか与えられません。妊娠中のビタミン剤摂取も、アメリカでは脊椎ニ分症や口蓋破裂の予防という点で、当然とされていますが、日本ではバランスの良い食事で、妊娠中の栄養素を取るというのが一般的です。
| お産に対する意識をみると、アメリカでは、妊産婦は自分がどういうお産をしたいか、はっきりとした意志を持ってお産に臨みます。個人主義という国柄もあって、妊娠・出産について夫婦共に非常によく勉強し、インターネットを使っていろいろな情報を集め、出産プランを練り、自分たちの希望する出産方法を応援してくれる医師・助産師を探します。硬膜外麻酔をしたい、水中分娩をしたい、家族に囲まれて自然分娩をしたい、会陰切開は絶対にしないでほしい、などなど、さまざまな希望をはっきりと主張するのです。だから医療サイドも、妊産婦が希望する出産方法を、全面的にバックアップし、感動に満ちた、満足できるお産を実現しようとします。 |
一方日本の場合、妊婦たちのお産に対する意識が、かなり進んできていますが、それでもまだまだ人任せ、医師にお任せが多いのではないでしょうか。
さらにアメリカでは、自分の体は自分で守るという考えが浸透しており、医師・助産師の説明に納得できない時は、セカンド・オピニオンという形で、他の専門家から意見を聞くことができます。当然ながら、それにかかわる費用も、保険会社が負担します。 |
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■多くの問題点・・・日本人妊産婦のケアは、コミュニケーションが大事
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日本人女性がアメリカで妊娠・出産をする場合、様々な問題に直面します。
まず第一に、言葉の問題があります。医師・助産師・看護師など医療スタッフと、十分なコミュニケーションが取れないと、聞き間違えたり聞き漏らしたり、とても不安な状態で、妊娠・出産を迎えることになります。
第二に、医療保険制度の違いから来る問題が、挙げられます。入院期間が極端に短いことや、高額な医療費、また、複雑な保険の仕組みを、十分に理解せずに、保険が支払われなかったり、英文の保険申請を、自分でしなければならないなど、経済的にも大きな問題です。
第三に、文化・習慣の違いからくる問題です。男の赤ちゃんの70%以上が、割礼していることや、授乳の際に、母親の乳首を清潔にするように、看護師が言わないこと、臍の緒が取れるまで沐浴をせず、石鹸のついたスポンジで、体をふくだけなど、文化的に受け入れがたいことが、たくさんあります。
第四は、家族や友人が身近にいないことからくる問題です。頼みの夫も、海外駐在員という立場上忙しく、朝早くから夜遅くまで、家にいないことなどにより、女性は孤立を深め、精神的にも不安定になっていきます。
このような背景の理解なしには、助産師として援助することはできません。私が日本人妊産婦をケアするうえで、一番大切だと考えているのは、コミュニケーションを十分に取ることです。妊婦検診の時にも、多くの時間をさいて、日米の医療保険制度の違いのほか、妊産婦の訴えをよく聞き、一つ一つの検査や、診察行為について説明するなど、上記の問題からくる不安の解消に、一番注意を払っています。また両親学級は、アメリカの妊娠・出産にまつわる様々な問題を説明するのに絶好の機会なので、いろいろ工夫して活用しています。
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■楽しいお産がモットー・・・妊産婦が主役。24時間妊産婦と共にいる
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私がアメリカ人助産師と比べて違う点は、患者さん全員に、私の24時間電話(携帯電話)の番号を教えていることです。これで妊婦は、どんなときでも必ず私に連絡が取れ、その結果、緊急時にもすぐに対応することができます。この直通電話は、患者さんにとても好評です。また病院見学などは、私が案内係となり、入院してから赤ちゃんの誕生まで、どういった手順を取るか、詳しく説明しています。
実際にお産の際の入院時も、最初から受付で待っていて、その後も赤ちゃん誕生・産後2時間まで必ず付き添います。分娩中は、出産の経過を詳しく説明したり、マッサージをしたり、時には話相手となりながら、一緒にお産を乗り越えます。それから、病院にはCDプレーヤーを持参し、お産の間中、ずっと音楽をかけてリラックスさせたり、呼吸法も工夫して、陣痛の痛みに意識を集中させないようにしています。
出産後は、マンツーマンで授乳・育児指導を行い、2泊3日で退院した後は、毎日電話で産後の状態をモニターします。産後の検診は、1週間後と1ヵ月後の2回です。
英語の「Midwife」(助産師)は直訳すると、「woman with」で「女性とともにいる人」となります。私は、この「助産師」という仕事を「天職」として持つことができたのを、本当にうれしく誇りに思っています。私が目指す助産師は、いつも明るく元気で、体力があって賢く、「楽しいお産」をモットーに、太陽のように妊産婦さんのそばにいて、暖かく見守り続ける、そんなイメージです。
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